研究紀要「日税研論集」

「国境を越える人・財の移動と相続税・贈与税」

人や財が国境を越えての国外、そして国内への移動が増大することで、その移動で生じる贈与税や相続税の課税関係は、日本の租税実務においても日常的に生起するものとなってきている。人や財が国境を越える場合のそれらの課税関係は、日本国内のみで完結する贈与や相続とは様相を異にする租税制度・理論のもとに置かれている部分があり、また、人や財が国境を越える際の法人税や所得税とも異なる複雑な課税問題が生じる場合がある。
本号は、個人が様々な意図・希望のもとで行う、海外での口座開設や不動産の取得、移住・長期滞在、さらには国際結婚、海外送金、国際信託などの、多様な人や財の国境を越える移動で生じる贈与税と相続税の課税関係に理論的・実務的に対応するための基礎理論と制度、さらにその具体的場面での適用を検討しようとするものである。

研究にあたって　首藤重幸
第１章　国境を越える人・財の移動と相続税・贈与税　首藤重幸
第２章　相続税・贈与税をめぐる紛争と準拠法　横溝大
第３章　国際相続・贈与への二重課税排除　手塚貴大
第４章　相続税法における財産の所在と納税義務者
　第１節　財産の所在　占部裕典
　第２節　納税義務者　今本啓介
第５章　国際結婚（婚姻・離婚・相続）をめぐる課税関係　阿部雪子
第６章　国際的な信託とわが国の相続税・贈与税　山口恵子