移転価格税制における移転価格課税と寄附金課税の区分 〔税研より〕
[平成28年7月1日現在法令等]
Q. 質問
(1)弊社のグループは主に自転車の製造、販売を事業としており、現在、電動自転車を製造している中国子会社からA電動自転車1台当たり3万円(円建て)で輸入しています。???しかし、昨年からの円安の進行、資材相場の高騰及び労賃のベースアップに配慮して仕入価額を4万円に引き上げて輸入することとなりました。この場合に移転価格税制の対象とされて移転価格課税が行われる恐れはないでしょうか。
(2)また、今年のはじめにインドに販売子会社を設立するとともに100億円の融資をしました。融資期間は10年で金利年2%で貸すことにしております。この場合に受取利子が移転価格税制の対象とされて移転価格課税が行われる恐れはないでしょうか。
A. 回答
〔( 1 )の回答〕
中国子会社との移転価格(比較対象取引価額)と独立企業間価格は一致しており移転価格税制の対象となっていないものと仮定して、この度、円安の進行、資材相場の高騰、労賃のベースアップの三つの要素を考慮して、新たに4万円で取引を行い、移転価格税制の独立価格比準法の一つの原価基準法でもって再計算したところ4万円が独立企業間価格として適正ということであれば、依然として独立企業間価格と移転価格は同額であって、移転価格税制の適用はないと考えられます。
一方、原価基準法で再計算した独立企業間価格が3万8千円であったとすると、移転価格4万円との差額2千円が操作されたものとみなされて移転価格課税される可能性が出てきます。独立企業間価格と移転価格の差額は租税特別措置法により損金不算入とされています。
〔( 2 )の回答〕
インドにおいて、銀行から同条件で融資を受ける場合の固定金利2%が平均的な独立企業間価格であれば、移転価格と独立企業間価格が一致するので、移転価格税制が適用されて移転価格課税が行われることはありません。
しかし、実際にインドの銀行で1年間の融資期間で借り入れを受けると、固定金利で9%から10%であるため、独立価格比準法による実際の独立企業間価格は9%から10%と考えられます。そうすると、移転価格と独立企業間価格の差額について、経済的合理性が見出されれば移転価格課税が行われ、経済的合理性が見出されなければ、実質的な贈与とされ寄附金課税が行われることになります。ここでいう経済的合理性とは、移転価格を決定する際に、日本の親会社がインド子会社との全体の納税額にも配慮して利子率が操作されたとみなされることです。
【解説】「税研」Vol.30-No.1(175号) 2014.5 63~68頁 参照
参考条文等
移転価格事務運営要領(事務運営指針)2-19、2-20
相談事例Q&A TOPへ
法人税一覧へ
<税務相談室>
共催:日本税理士会連合会、公益財団法人日本税務研究センター
支援:全国税理士共栄会
<相談事例登載>
ホームページ運営:公益財団法人日本税務研究センター
ホームページ支援:日本税理士共済会